顧客との関係でも、採用でも、パートナーシップでも、すべての人間関係の本質は同じです。
前提として、私たちはいつでもお互いが「多様な選択肢」を持つ中で、意志を持って選び合っているはずなのに、いつの間にか「選ばれている状態」を自分の権利であり、当たり前だと錯覚した瞬間から、相手への扱い方は乱れ始めます。
●「この人は長年働いてくれているから辞めない」
●「この会社は契約を切らないだろう」
●「昔からのお客様だから大丈夫」
●「長く付き合ってるから大丈夫」
●「前に一度教えたから、覚えているだろう」
これらを前提(当たり前)にしてはいけません。
過去の関係(歴史や恩)に依存し、現在の価値提供を更新しなくなる。
継続を前提にすると、「相手が毎回選び直している」ことを見落としてしまいます。
目指すのは、「相手を雑に扱っても離れない関係」ではなく、「お互いにいつでも離れられるけど、それでも一緒にいたいと思える関係性」です。
「この人は10年いるから大丈夫」ではなく、毎月・毎年・次に誰が来ても、環境が変わっても、あなたと関わりたい・ここに任せたい」と思われる状態をつくること。
なぜなら、「次もここを選ぶ義務」なんて、誰にも無いからです。
「ミスの指摘」と「人を悪者にすること」は全く別物
例えば、入社して3日目の社員に対して、「ここが違います。次回からはこの資料を見て作業してください。」
「このケースで分からなくなったら、この判断基準を使ってね」と伝えられれば、誰かを悪者にすることなく、別の人が来ても同じように機能する仕組み(再現性)へ繋がります。
言われた本人も「そりゃそうだ。次からこうします」と納得するだけです。
しかし、仕組みや責任範囲・基準が明確でない現場ではこうなります。
「なんでできないの?」
「前からこうだから」
「ルールなのに」
「あーあ、休憩とれんわ」
「違います」と指摘され、「わかりました!」と終わったはずなのに、告げ口が始まり、別の人間が同じ指摘にやってきて責任転嫁が起き始める。
これはもはや、業務指導ではなく、人格否定の幼稚園のような環境です。
別の人が来た時にも同じことが起きてきます。
見るのは、「人の評価(感情)」ではなく、「プロセス(構造)」を見る。

設備は最先端・商品は高品質。なのに「ルールが機能しない」A社
「会社のルールだから」と言いつつ、現場では全くルールが機能していない組織があります。
☑マニュアルがない➡作業に入るたびに、「これどうだっけ?」と迷う
☑判断基準が人依存➡聞く相手によって言っていることが違う
☑導線が曖昧➡誰に聞いたらいいのか分からない
☑責任転嫁と人格否定➡「俺が休憩できないのはお前らのせいだ」等と、大声で叫ぶ社員が出てくる
☑再現性ゼロ➡感情やその日の機嫌で仕事が動いている
設備や商品がどんなに立派でも、現場の知識が「人の頭の中」にしかない状態です。
その結果として起きるのは、
●些細なミスの多発
●一部の人に負担が集中
●働く人の意欲減退
●指示が頭に入らない恐怖政治
●やり直しの急増
●人が定着しない
●感情的な指摘や人格否定により、人間関係が悪くなり、心身の健康被害が起きる
現場は「背中を見て覚えろ」「前に教えた」「雰囲気を読め」「普通分かるでしょ」という暗黙の状態に支配され、最終的に「声のでかい人」「長くいる人」で支配される不健全な現場と化していきます。
やり方はアナログだが、人が辞めても同じ品質が出せるB社
対照的に、低単価商品を大量流通させるB社は、やり方はアナログでも「仕組み」で回っています。
☑マニュアル・資料を見れば全体像がわかる
☑どの役割の人も声を掛け合い、自分の範囲と助け合いの基準を理解している
☑仕事も指摘も感情ではなく、目的・判断基準を共有し、動いている
☑経験が浅い人でもすぐ理解できる
☑人の機嫌を伺う無駄な労力がなく、目の前の作業・仕事に集中できる
☑気になる事が起きても、誰かを悪者にするのではなく、「こういう事例がよく起きます。ほっておくとこうなります。だからこう運用しています」という数分の短いミーティング・全体共有で判断基準をアップデートします。
やるべきことを皆でさっさと終わらせて、定時に帰る。
働く人の健康も時間も守れられる環境が自然と生まれ、結果として生産性も高くなります。
仕組みがあるから、人は安心して働けます。
これは、「人が優秀かどうか」「教育したかどうか」ではありません。
人が変わっても、回るようにつくられています。
B社は、人が辞める事、人が入れ替わること、人が忘れることを予め前提にし、資料と仕組みでカバーしていました。
だからこそ、誰が来ても同じ品質を再現することができていました。
大量の業務を高速で回す現場において、個人の感覚や、その日の感情に頼っていたら、現場が崩れてしまいます。
人は忘れる生き物であり、記憶力や能力のばらつきは必ず発生します。
これらを前提に組み込み、資料と仕組みで現場をまわす。
心身に出ているものだけを見るのではなく、その人が働いている環境まで見ていく。
それこそが、働く人の健康を守り、健全な関係性を維持し、成果を出し続けます。
健康も、関係性も、組織も、当たり前だと思い始めた瞬間から、少しづつ見直しが必要なのかもしれません。
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